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2005年 12月 22日
 私がまだ小学校に上がるか上がらないかの頃だったと思う。クリスマスも近いある日の午後のことである。父が突然白い絵具と筆を持ってやって来た。九州大分でクリスマスの頃に雪が降ることなどほとんどないのだが、ならばと父は茶目っ気も半分、ささやかな演出をと思ったのだろう。食事や団欒にと我が家で最も家族が集う一間の白壁の少し高いところに、45cm四方くらいの小さな明り取りのガラス窓があったのだが、父はその窓ガラスに隣家の屋根越しに外側から筆で白い丸をいくつも描いた。その時私には、それが単に青い空に灰色の丸がいくつも並んでいるとしか見えなかったのだが、父は 「夜になったら本当の雪になるよ」 と言い、私はそういうものかと夜が来るのを楽しみに待った。
 日も暮れ、辺りが暗くなった頃、私はそのガラス窓を見上げた。そこには父の描いた丸い雪が四角に切り取られた夜空の中に輝くように白く浮かび上がっていた。それはまるで父の言葉通りの本当の雪のようだった。この時節になると、時折あの雪の日を思い出す。
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by kpage | 2005-12-22 23:05 | ■思ったこと
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