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菊姫の追及

 金世文が智子に菊姫と間違ってささやきかけた、『あなたはどういう奇縁でか、今、ここにいらっしゃるが、自分のことをよくご存知ない。あなたは、本当は真に高貴な血筋の方であって・・』という言葉は、智子から菊姫には勿論伝わっている、とすれば、菊姫が気になる自分の捨て子物語とそれとをリンクして考えるのは自然な流れであり、事情の仔細が全く分からないまま、自分の考えも及ばない世界へ引き込まれるかのような不安を感ぜずにおれないのも当然である。
 しかし、今、彼女の心に満ち溢れるものは青井への思慕である。だから、このまま捨てては置けぬ、何かの間違いであろうとこの耳で確かめたい。というより、そう願うような気持ちの菊姫であったと思う。その真剣な気持ちが濃紺の洋装束といういでたちにも表れていた。
(第76話の感想)
by kpage | 2005-07-03 20:02 | ■花はさくら木の感想