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ものさし探し

 朝日新聞朝刊の文化欄に『ものさし探し』というタイトルのコラムが連載されている。気付いたのは9日で、既に3回目を数えていて今日が5回目、残念ながら1回目、2回目のバックナンバーはもう探せなかった。
 
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3回目のテーマは『世論を測る』。ランキングや世論調査によって限られた選択枝から選ばせることで人々の意見が(意識的に?)誘導される危険をはらむとした上で、人々は単に多数にながされているのでなく、賛否の理由も実は人様々であって、人々は意外に何が公共に最善かを考えているとし、単純な賛否だけを問う十羽一絡げ式の世論調査などには苦言を呈している。掲載写真は「仏の海」(1995年京都・三十三間堂にて)「千手観音千体仏像 みな違うはみな同じか」の杉本氏のコメント。

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第4回のテーマは『時間を編集する』。杉本氏は『人の目は長時間露光のカメラだ』のようなことを言っている。我々の眼は生まれてから死ぬまでの気の遠くなるほどの時間に渡る映像を、連続的に記憶として取り込んでいるということだ。杉本氏は写真家だから長時間露光とわざわざ言うのだが、普通には映画やビデオと言った方が素直なだろう。ただ、生涯をかけてカメラのシャッターをずっと開けたままという感覚は写真に置き換えた方がなんとなくしっくり来る気がする。もっとも記憶の底からそれらを正確に取り出すのは至難の業だ。
 とにかく現代人は忙しい。溢れかえる情報はつまみ食いするしかない。やりたいことも沢山現れる。当然そういう社会を維持している仕事の量も増加の一歩だ。急がしくとも中身の濃い時間であればいいが、細切れの目次ばかりの内容のない時間を過ごすことになってはいないかと心配である。掲載写真は「U.A.プレイハウス、ニューヨーク」(1975年、映画一本分を長時間撮影)「『サタデー・ナイトフィーバー』上映中の劇場」杉本氏のコメント。

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第5回目のテーマは『タブーは揺れる』。写真はかつてのワールドトレードセンターである。併記された杉本氏のコメントは「一文明が危機に瀕する時、カミカゼ攻撃は起きる」。意味は少しは分からないとは言え、タブーと言えど時代とともに変遷する。この建物を崩落させ多大な犠牲者を出した同時多発テロ後、関連して首をかしげるタブーもいくつか生まれた。日本でも戦後の半世紀に渡ってタブーだった「愛国心」が、今や反対するのがタブーの様相であるし、このまま行くと「人権」がタブーになるかも知れないと論じられている。そういう意味で今は何がいいのか悪いのか対処しづらい本当に複雑な時代だと思う。掲載写真は「ワールドトレードセンター」(1997年)
# by kpage | 2007-01-11 14:02 | ■思ったこと
無料版flickrの最大アップ枚数は200枚。早晩パンクしそうです。あまり大きな画像はアップできませんが、無料でかなりの容量が利用できるサービスがありましたので、そちらで開設しました。
K-photograph( http://kpage.blog71.fc2.com/ )です。右リンクにも追加しています。
# by kpage | 2006-06-16 11:14 | ■お知らせ
 本城直季氏の写真集を見てから、すっかりファンになった感のあるジオラマ風写真だが、関連するサイトをあちこち検索して回ってみると、すでに沢山の人がこういう写真を楽しんでいるのに少し驚く。しかし、やはりというか、私などは高価なティルトレンズを前にただ立ち尽くすばかりなのだが、なんとか他の方策はないものかと、持ち合わせのCGソフトを使ったり、レンズベビーというものがあって、これで代替が結構出来るのではとか、随分苦心されている様子なども伺えて楽しい。特にレンズベビーはすごく個性的、魅力的なレンズで、値段も12600円、19950円と手が届き易い。今日、そんなことを色々調べていたら、いいソフトを発見した。TB's Defocus Filter というボカシのフリーソフトだが擬似被写界深度機能というのが付いていて、”らしく”見える画像が作れるのだ。細かい理屈は私にはよく分からないのだが、案ずるより生むが易しでやってみた。う~ん、どうだろう・・。もう少し高所から俯瞰した写真があればよかったのかなと思うのだが。写真は flickr に載せました。
# by kpage | 2006-06-04 00:54 | ■身近の話題

景観の日

景観の日_a0006954_10502124.jpg 本城直季さんの作品 (写真集にあったような、なかったような記憶が曖昧^^;) なのだろうか、今日の朝日新聞朝刊のシティバンクの全面広告に例のジオラマ風写真が使用されている。
 実写のはずの波打つ海面が、ゼリーでも固めて作ったかのように嘘臭く変身しているのだが、この質感まで変化させる不可思議、可笑しさは一体なんだろうと、改めて感心する。その上、眺めているだけで何か気持ちがホッとする。身近な街や自然をいとおしく見せてしまうこの写真の眼差しを察知して、これを見る人は心を少しやさしくするのだろうか。今日6月1日は本日から施行された景観法に因んで「景観の日」と定められたそうだ。一口に景観を守ると言っても現実には色々な思惑や利害が絡んで難しいだろう。それでも常にこの写真の眼差しに立ち返りながら、景観後進国日本の汚名を是非晴らしてもらいたいと思うのだが、更に言えば今日は「写真の日」でもあるらしい。
# by kpage | 2006-06-01 12:17 | ■身近の話題

ミニチュアの本物

ミニチュアの本物_a0006954_22234829.jpg 一昨日書店であれこれ買う気もないのに見ていたら、とても面白い写真集を発見した。それは「small planet - 本城直季 写真集」リトルモア 2006-04-18出版という写真集だ。この作品サイトを見てもらえれば何が面白いか直ぐに分かってもらえると思う。副題に「誰も知らない もう一つの地球」とあって興味を引いたのだが、ページをめくりながら私は、「なんて細かいところまで丁寧に作ったジオラマなんだ」と正直思った。しかも夜景に至っては建物一つ一つに明かりが灯っている・・!そして、私はこの辺りに来てやっと、「これはちょっとおかしいぞ」と思ったのだが、それには実は訳があった。
 昨年9月、日帰りで東京へ行ったことがあり、空いた時間にお上りさんよろしく六本木ヒルズへ行ってみた。六本木ヒルズのどの建物の何階だったかは正確な記憶にないが、確か東京やニューヨークや上海?など大都会の航空写真を元にした精密で大規模なジオラマの展示があった。これがすごくユニークで、思わず携帯で一枚撮ってしまったのが上の写真だ(確か撮影禁止となっていたが思わず撮ってしまった、ごめんなさい)。これが、最初の1ページ目から頭にあってそのようなものだと思い込んでしまっていたのだ。
 それにしてもこの写真は面白い。どう見てもミニチュアである。どうやってこれは撮っているのか調べたところ、ティルトレンズというものを使っているようだ。それでこのレンズさえ手に入れば自分でもこんな写真が撮れるのだと思い、早速値段を調べたところでは安いところでも12~3万くらいするようで一気に熱が冷めてしまった。
 遠景の極狭い一部分にピントを合わせた写真を見ると、何故だかよくは分からないが、知識として、経験としてミニチュアに見えてしまうのだというようなことを撮影した本城氏は巻末に書いておられる。確かに間近のものを見る時、通常意識はしていないが注意してみると前後にあるものはかなりボヤけている。遠くにあるものは、その一部に目を凝らしたところでその直ぐ前後にあるものがそれほどピントがボケているようではない。前後がボケるのは間近にあるもの、すなわちビルディングの形をしていようが小さいものなのだ、と。理屈はこういうことなのだろう。
 
# by kpage | 2006-05-26 22:26 | ■身近の話題